Interview09 【中 一絵】

「ネガティブ思考は持ち合わせておりません」
メイクが開いた、社会への扉

キーワード

ポジティブ思考、起業、美容部員

百貨店の美容部員は、憧れの存在

高校生の頃から、百貨店の化粧品売り場に行くのが大好きでした。アルバイトで貯めたお金で化粧品を買うのが楽しみで。その頃から美容部員になりたかったのですが、両親の了解が得られず、専門学校への道を諦めました。その後、医療事務の資格を取り、大学病院で1年半勤務したのですが、夢を諦めきれず美容部員のアルバイトを見つけ、美容業界へ移りました。そこから、CHANELの美容部員を15年ほど勤め、最終的にはスキンケア・リーダー、サブチーフを任されていました。毎シーズン、新商品の発売に合わせて、リーダーとして東京まで研修へ行きました。その点で、化粧品や肌構造の理解など、充実した教育を受けていたと思っています。

悲劇のヒロインから起業の道へ

長男を出産してから、育休中は何もできず、家から出るのも嫌になっていました。いろいろなことに葛藤し、悲劇のヒロインのようになっていたのです。あるとき、保健師さんが自宅に来てくれ、「ダウン症の会があるから、行ってみない?」と誘ってくれました。以前は、毎日お化粧していたのに、出産後はお化粧する気にはなれず、髪などもボサボサで生活していた私。会に出向く際に「初めての人に会うから…」と久しぶりにお化粧をしたのです。すると、なぜかスイッチが入ったように気持ちに大きな変化を感じました。ダウン症の会では、いろいろなお母さんに出会いました。そこから、長男のことも肯定的に受け止めることができるようになっていき、外出もできるようになったのです。

メイクをきっかけに、社会への扉を再び開けることができました。この経験を、障がいを持つ子供のお母さんたちのために、生かせないかと思ったのです。

まずは、メイクセラピー2級の資格をとりました。仕事として成立させるためは、どうしたらいいのか、と考えをめぐらせていた時、介護美容研究所のことを知りました。当時、父の病気も重なっていたため、落ち着いてから退職し、介護美容研究所の大阪校へ通いました。

出会いが繋いだ、今日の私

今は、デイサービスで働きながら、介護美容事業を運営しています。けれど、最初は右も左もわからなかったのです。

起業の知識も経験もなかった私が、なぜ事業を始めようと思ったのか。それは、ダウン症のお母さんたちとの出会いがあったからです。

子供が生まれてから、障がいを持った子供をどのような社会で育てていきたいかと考えるようになりました。ダウン症の会で出会ったお母さんたちの中には、同じように考え、起業をしたお母さんたちがいたのです。そこで、私の経験も誰かの役に立つかもしれない、と思い起業に至りました。

そのほか、起業してからは、DAOコミュニティの長尾さんから、ゼロイチ達成の方法を教わりました。

また、同じく、伊藤ちひろさんが出場したことがきっかけで、Beauty Japan大会のことを知りました。何かチャンスになるかもしれないと思い、翌年、私も出場したのです。入選はしませんでしたが、大会をきっかけに、施設の社長さんなど応援してくれる人が増えました。これらの出会いによって、今日の私があります。もし出会えてなかったら、途中で諦めていたことでしょう。ありがたいことに、様々なことを行動してきた結果、応援者を得られるなど、予想以上のものを得られました。

メイク講師として

今までメイク講師として対面の講義を大切にしてきました。これからは、解説動画を含めコンテンツを充実させ、再現性の高いセミナーとしていき、より多くの介護美容セラピストが活躍できるための一役を担えたらと考えています。今は準備中ですが、受講料に反映させていき、売り上げ目標の達成も目指します。また、コンテンツが整えば、秋から美容師資格の取得のため、勉強を始めることにしています。通信制で3年間の予定ですが、確実に事業を進めていくためにがんばります!


強みは、「元気もらったわ」と言ってもらえること

長所にも短所にもなり得ますが、ネガティブな思考はあまり持ち合わせていません。人の悩みに対しても、「こういうふうに考えたら?」とポジティブな意味付けをして返答できるので「すごく元気になるわ」と言っていただけます。接客の経験から、相手のちょっとした様子の変化をキャッチし、施術や声掛けなどを変えて、前向きに気分を変えられるのも強みだと思っています。また、人の強みや、良い点を見つけることも得意です!

初心、忘れるべからず

実は、調子に乗ってしまいやすいところがあります。家族との時間を作りたくて始めた介護美容だったけれど、いつの間にか本末転倒になりそうなことも……。

応援してもらっていると思い込んでいて、実は100%そうではなく、的を得たことを「バンっ」と指摘された時には、落ち込んだりします。家族の支えがあってこその、私です。そのことを忘れないようにしています。

わかっているのは、ここまで来たら、引くに引けない!子供達に好きな仕事をしている母親の背中をみせながら、家族に恩返しできるまで、続けていきます。

共に活躍する
全国の介護美容セラピストへ

以前は、介護美容1本で生活することを目標にしていました。しかし、目指すところは、福祉業界全体で、想いのある人材が増えること。介護美容を取り入れることによって、丁寧な介護を提供する人材が増え、介護業界全体が前向きになっていくことが目標です。そのためには、私たちが活動を継続することが大切です。介護美容一つの収入で生活することにこだわるよりも、柔軟に自分のできることで収入を得ながら、続けていくことに重点をおいた方が継続しやすいと思います。

中 一絵
Naka Hitoe

  • 認定メイクセラピーアドバイザー
  • 全身性障がい者移動支援研修課程修了
  • オレンジサポーター
  • 活動地域:大阪府
  • 青のアイコンから、
    パワーアップしたメイク講座の詳細がご覧になれます⇩

  記事執筆        
刈茅志保(かるかやしほ)
Instagramはこちら 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA